赤字決算でも融資を受けるための3つの重要ポイント
はじめに:赤字でも融資は可能?
「決算が赤字になってしまった。もう銀行から融資を受けることは難しいのだろうか…」
このような不安を抱えている経営者の方は少なくありません。しかし、実は赤字決算であっても融資を受けることは十分に可能です。
例えば、コロナ禍のような外部環境の急変により、たまたま1年だけ赤字が出た程度であれば、銀行融資にそこまで大きな影響は出ません(もちろん赤字の金額にもよりますが)。
また、融資審査はPL(損益計算書)だけで判断されるわけではありません。BS(貸借対照表)も大きな判断材料の一つです。PLで赤字が出ていても、BSが健全であれば融資の可能性は十分にあるのです。
本記事では、赤字ではあるがBSがある程度健全な場合に、どのように考えて融資相談をしていくべきか、3つの重要ポイントを解説していきます。
① キャッシュフローという考え方
銀行融資において最も重要な視点の一つが、「キャッシュフロー」です。多くの経営者が誤解しているのですが、会社が倒産するのは赤字を出し続けるからではありません。
会社が潰れるのは「お金がなくなったとき」
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。決算書の損益でどんなに黒字(利益)が出ていても、倒産してしまう場合があります。
では、会社が潰れるのはどんなときか。それはお金(キャッシュ)が無くなったときです。従業員への給与が払えない、仕入先への支払いができない、そういった状態に陥ったとき、会社は事業を継続できなくなります。
逆に言えば、赤字であってもキャッシュが回っていれば、会社は存続できるのです。
減価償却による赤字の例
製造業を例に、具体的なケースを見てみましょう。
ある製造業の会社が、生産性向上のために新しい設備を5,000万円で導入したとします。この設備の耐用年数が5年の場合、会計上は毎年1,000万円ずつ減価償却費として経費計上されます。
減価償却費は、設備を購入した年度ではなく、複数年にわたって経費計上される会計上の費用です。そのため、実際にお金が出ていくのは設備購入時の1回だけですが、決算書上は毎年費用として計上されます。つまり、減価償却費は実際の支出を伴わない費用なのです。
このとき、もし営業利益が800万円だった場合、決算書上の経常利益は以下のようになります。
- 営業利益:800万円
- 減価償却費:▲1,000万円
- 経常利益:▲200万円(赤字)
しかし、実際のキャッシュの動きを見てみましょう。減価償却費1,000万円は実際の支出を伴わないため、この年度に実際に増えたキャッシュは営業利益の800万円です。
つまり、決算書上は200万円の赤字でも、実際には800万円のキャッシュが増えているのです。設備投資の支払いは導入時に済んでいるため、この800万円は純粋に会社の手元に残るお金となります。
銀行が重視するのは「返済能力」
このようなケースでは、赤字であっても融資を受けられる可能性は十分にあります。なぜなら、銀行が最も重視するのは「この会社にはきちんと返済する能力があるか」という点だからです。
上記の例では、毎年800万円のキャッシュが生み出せる会社であることが証明されています。このキャッシュから借入金の返済は十分に可能だと判断されるのです。
ですので、赤字でもキャッシュが回っている場合は、十分に融資可能です。融資相談の際には、PLだけでなく、実際のキャッシュフローの状況を丁寧に説明することが重要になります。
② 今後の収益改善計画
一時的な赤字ではなく、赤字が続いている場合でも、近い将来解消できる見込みがあるのであれば、融資を獲得できる可能性があります。そこで必要となってくるのが「収益改善計画」です。
収益改善計画の基本構成
収益改善計画は、直近の実績から3~5年後の姿を数値に落とし込んで表現します。将来のPLやBSを作成し、どのように財務状況が改善していくのかを示すのです。
しかし、ここで多くの企業が陥りがちな失敗があります。
よくある「ダメな計画書」
しばしば目にする良くない計画書の例として、3~5年後のPLなどの数値が並んでいるだけで、どのように行動するのかが書いていない場合があります。
正直なところ、数字を並べるだけであれば、少し簿記をかじった人間でもできます。しかし、銀行はそういった計画書は評価しません。なぜなら、現実性がないからです。
「3年後に売上が2倍になります」と数字だけ書かれていても、「どうやって?」という疑問に答えられなければ、それは単なる希望的観測に過ぎません。
銀行が知りたいのは「具体的な行動」
銀行が本当に知りたいのは、どんな活動をすることで会社の業績を立て直そうとしているのかということです。
具体的な改善活動の例を見てみましょう。
製造業のコスト削減例
- 不良品率を現状の5%から2%に削減(品質管理体制の強化)
- 外注加工費を年間500万円削減(内製化による効率化)
- 電気料金を15%削減(省エネ設備への更新)
- 材料ロス率を10%から5%に改善(発注精度の向上)
建設業のコスト削減例
- 協力会社の見直しによる外注費10%削減
- 現場管理のデジタル化による管理費20%削減
- 資材の一括購入による仕入単価5%削減
- 工期短縮による間接費の圧縮
このように、具体的な活動内容を明示し、それによってどれだけのコスト削減効果があるのかを数値に落とし込みます。そして、それをPLなどに反映させることで、計画の実現可能性が見えてくるのです。
管理体制まで説明する
さらに重要なのが、その計画を実行し管理する体制です。以下のような管理の仕組みを説明することで、計画の信頼性が格段に高まります。
- 月次での進捗確認会議:毎月の実績と計画の差異を確認し、対策を協議
- KPIモニタリング:重要指標を定点観測し、目標達成度を可視化
- 担当者の明確化:各施策の責任者を明確にし、実行責任を持たせる
これらの管理体制を説明することで、ようやく改善計画としての意味が出てくるのです。「絵に描いた餅」ではなく、「実行可能な計画」として銀行に評価されるためには、この管理体制の説明が欠かせません。
③ 経営者の信頼性・誠実さのアピール
融資審査において、数字と同じくらい重要なのが「経営者の人間性」です。
真摯に向き合っている企業には銀行も協力的
銀行は、事業の課題に真摯に向き合っている経営者には協力的です。逆に、ごまかしたり、嘘をついてでも融資を取ろうとする姿勢が見えると、銀行は融資できません。
事業運営は外部環境にも大きく左右されますので、常に業績が上昇し続けるということは現実的に難しいものです。好調な時期もあれば、厳しい時期もあります。
だからこそ、常日頃から金融機関との信頼性を高めておくことで、いざという時に相談できる体制を整えることが重要なのです。
日頃からできる信頼構築
金融機関との信頼関係を築くために、日頃からできることがあります。
定期的な業況報告 決算書を提出するだけでなく、四半期ごとや半期ごとに業況を報告する習慣をつけましょう。好調な時だけでなく、厳しい状況の時こそ、早めに情報共有することが信頼につながります。
決算説明の実施 決算書を渡すだけでなく、その内容について経営者自らが説明する機会を持ちましょう。数字の背景にある経営判断や、今後の方針を伝えることで、銀行の理解が深まります。
担当者との定期的なコミュニケーション 融資の相談がある時だけでなく、日頃から担当者と顔を合わせる機会を作りましょう。雑談でも構いません。人間関係が構築されていることで、いざという時に相談しやすくなります。
関係構築前にピンチを迎えた場合
しかし、こうした信頼関係の構築は、すぐにできることではありません。関係性を構築する前にピンチを迎えてしまう場合もあるでしょう。
そのような場合でも、やはり誠実に対応することが最も重要です。
誠実な対応とは何か
具体的には、以下のような姿勢を指します。
- 業績悪化の原因を正直に説明する:言い訳ではなく、客観的な事実と分析を伝える
- 経営上の落ち度があった場合にはそれを認める:隠さずに反省点を明確にする
- 根拠のない楽観的な観測を話さない:希望的観測ではなく、現実的な見通しを示す
銀行は世間が思っている以上に「人間」で動くものです。数字やロジックだけでなく、「この経営者を応援したい」「この会社なら立ち直れる」という担当者の気持ちが、融資判断に影響することも少なくないのです。
補足:担保・保証・保証協会の活用
ここまで、赤字でも融資を受けるための3つのポイントを解説してきました。最後に補足として、担保や保証についても触れておきます。
銀行が融資判断で見る2つのポイント
極端なことを言えば、銀行としては以下の2点を押さえられれば、融資することができます。
- まっとうな事業のお金の使い方であること
- きちんと返済もされるであろうこと
一つ目の「資金使途が適切か」については、事業計画書や資金使途説明で確認ができます。しかし、二つ目の「きちんと返済されるであろう」という点の判断が非常に難しいのです。
将来を完全に読むのは不可能
銀行は、その業界の良し悪しや将来性、企業の実力を見極めようとします。しかし、どんなに精緻な分析を行っても、将来を完全に読むのは不可能です。
そこで銀行は、万が一のことがあっても資金が返済される「保険」のような仕組みに頼ります。それが、不動産などの担保や、信用保証協会の保証といったものです。
財務が弱い時期の資金調達
担保や保証協会の詳細については別の機会に詳しく説明しますが、財務が弱い時期には、こういった保全手段をベースとして資金調達を行うことが基本となります。
特に赤字が続いている状況では、無担保・無保証での融資は難しいケースが多いため、不動産担保や保証協会の保証付き融資を積極的に活用することが現実的な選択肢となるでしょう。
面談時のポイントと注意点
最後に、実際に銀行と面談する際のポイントと注意点をお伝えします。
銀行員も「人間」である
融資審査には明確な基準や数値判断がありますが、最終的には「人」が判断します。銀行員も人間ですので、その経営者の人柄を見て「何とかこの人に融資をしたい」と思えるかどうかが、微妙なラインでの判断を左右することがあります。
だからこそ、ごまかしたりせずに、誠実に対応することが何よりも重要です。小手先のテクニックよりも、真摯な姿勢が評価されるのです。
専門家に作成してもらった計画書の扱い
収益改善計画書を、中小企業診断士や税理士などの専門家に作成してもらうこともあるでしょう。銀行員も資料を見れば、それがプロの作ったものであるかどうかはわかります。
それ自体は問題ではありません。むしろ、専門家の支援を受けて精度の高い計画を作ることは評価されます。
しかし、最も重要なことは、経営者の方がその内容をきちんと理解していることです。
「お金を借りるためだけに綺麗な絵を描いてきた」のではなく、「本気で事業を改善するために考え抜いたものである」ことが伝わるように、計画書の中身はきちんと自分のものにするようにしましょう。
面談で質問されたときに、専門家任せで答えられないようでは、銀行の信頼を得ることはできません。計画書の数字の根拠や、改善活動の具体的な内容について、経営者自身の言葉で説明できることが大切です。
まとめ:赤字でも諦めない
赤字決算でも融資を受けるための3つの重要ポイントをおさらいしましょう。
① キャッシュフロー重視の説明
- 会社が潰れるのは赤字の時ではなく、キャッシュがなくなった時
- 減価償却などにより、赤字でもキャッシュが回っているケースは融資可能
- PLだけでなく、実際のキャッシュフローを丁寧に説明する
② 今後の収益改善計画
- 数字だけでなく、具体的な行動計画を示す
- コスト削減などの施策を数値化し、実現可能性を示す
- 月次進捗管理やKPIモニタリングなど、管理体制まで説明する
③ 経営者の信頼性・誠実さのアピール
- 日頃から金融機関との信頼関係を構築する
- 業績悪化の原因を正直に説明し、経営上の落ち度も認める
- 根拠のない楽観論ではなく、現実的な見通しを示す
赤字だからといって、融資を諦める必要はありません。適切な説明と誠実な対応により、銀行から支援を得られる可能性は十分にあります。
ただし、そのためには財務の状況を正確に把握し、説得力のある改善計画を作成し、銀行に対して効果的にプレゼンテーションする必要があります。
赤字決算での融資相談をお考えの方へ
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赤字の状況でも、適切な説明と計画があれば融資は可能です。まずはお気軽にご相談ください。


