【前編】創業者向けの「事業計画書」書き方完全ガイド

はじめに:事業計画書は「書かされる」ものではなく「自分のため」に作る

これから起業を考えている方、または既に事業計画書を作成したものの、「これで本当に大丈夫だろうか」と不安を感じている方へ。

事業計画書は、融資を受けるために「仕方なく書かされるもの」と思っていませんか?確かに、融資申請では必須書類ですが、それだけではありません。事業計画書は、あなたのビジネスを成功に導くための設計図なのです。

私がこれまで多くの創業者の支援をしてきた中で感じるのは、事業計画書をしっかり作った人ほど、開業後の成功率が高いということです。逆に、「とりあえず融資が通ればいい」という姿勢で作った計画書は、審査にも通りにくく、仮に開業できても早期に行き詰まるケースが多いのです。

本記事では、創業者向けの事業計画書の書き方を、実務的な視点で徹底解説します。前編では事業計画書の必要性と基本構成、そして事業内容の書き方までを解説します。

① 創業時に事業計画書が必要な理由

まず、なぜ事業計画書が必要なのかを理解しておきましょう。

融資申請では必須書類

日本政策金融公庫などで融資を申請する場合、事業計画書はほぼ100%提出を求められます。計画書なしで融資を受けることは不可能と考えてください。

しかし、これは「義務だから仕方なく作る」という消極的な理由ではありません。むしろ、融資を受けるという機会を活かして、自分のビジネスを徹底的に見つめ直す良い機会なのです。

日本政策金融公庫の創業融資について詳しくはこちら

ビジネスの成功率を高めるための設計図

事業計画書を作成する過程で、多くの創業者が「こんなに甘く考えていたのか」と気づきます。

例えば、「月商100万円は達成できそう」と漠然と思っていても、実際に客数・客単価・営業日数を積み上げて計算すると、「これは現実的に難しい」と分かることがあります。多くの創業者は売上計画が甘いのです。

事業計画書を作ることで、開業前にこうした「甘さ」に気づき、修正できます。これが成功率を高める理由です。

自分では気づけない「思い込み」を除去できる

客数予測、価格設定、競合対策が曖昧なまま開業すると失敗しやすいのは当然です。

しかし、自分一人で考えていると、「このエリアなら客は来るはず」「この価格なら買ってもらえるはず」という思い込みに気づけません。

事業計画書として文章や数字に落とし込むことで、そして専門家にチェックしてもらうことで、こうした思い込みを客観的に検証できるのです。

「書かされる」のではなく、自分のために作る

繰り返しになりますが、事業計画書は「融資のために仕方なく書かされる資料」ではありません。創業者が自分のために作る資料という視点が重要です。

この視点で作成すれば、自然と内容も充実し、結果として融資の審査にも通りやすくなります。

② 事業計画書の構成と書くべき内容

それでは、具体的にどのような構成で、何を書けばよいのでしょうか。

事業計画書の基本構成

一般的な事業計画書は、以下の構成で作成します。

  1. 事業概要:事業の全体像を簡潔に
  2. 創業動機:なぜこの事業を始めるのか
  3. 取扱商品・サービス:何を提供するのか
  4. 市場・競合分析:市場環境と競合状況
  5. 営業戦略:どのように顧客を獲得するのか
  6. 収支計画:売上・経費の見込み
  7. 資金計画:必要資金と調達方法

これらの項目が、一貫したストーリーとしてつながっていることが重要です。

創業動機の書き方

創業動機は、事業計画書の中でも重要な項目です。しかし、多くの創業者が「好きだから」「経験があるから」という理由だけで書いてしまい、評価が低くなります。

重要なのは、顧客の課題と自社の提供価値が一致しているかを軸に書くことです。

弱い例 「私は料理が好きで、長年飲食業で働いてきたので、自分の店を持ちたいと思いました」

良い例 「現在、当エリアには健康志向の単身者向けの飲食店が少なく、多くの方がコンビニ弁当や外食チェーンに頼っています。私は15年間、栄養士として病院で勤務し、健康的な食事提供のノウハウを蓄積してきました。この経験を活かし、手軽に健康的な食事を提供できる店舗を開業します」

違いがわかるでしょうか。後者は、「市場のニーズ(課題)」と「自分の経験・スキル(提供価値)」が明確に結びついています。

商品・サービス内容の書き方

商品・サービス内容を書く際は、以下の3点を明確にします。

①他社との具体的な違い 「当店は新鮮な食材を使用します」では弱いです。「当店は地元農家と直接契約し、朝採れ野菜を当日中に提供します」のように、具体的な違いを示しましょう。

②顧客にとってのメリット 自社視点ではなく、顧客視点で書くことが重要です。「高品質な商品」ではなく「長く使える耐久性で買い替えコストを削減」のように。

③再現性(経験・スキル・仕組み) その商品・サービスを、なぜあなたが提供できるのか。経験、スキル、資格、協力者、仕組みなどを示すことで、実現可能性を証明します。

③ 事業内容の書き方:市場・顧客・競合の分析

事業内容を書く際、最も重要なのが市場・顧客・競合の分析です。ここが曖昧だと、事業計画全体の説得力が失われます。

市場規模の示し方

市場規模を書く際は、根拠のある数字を使うことが重要です。

「○○市場は成長しています」という抽象的な表現ではなく、「経済産業省の統計によると、○○市場は2024年に○○億円規模で、前年比5%の成長を記録しています」のように、出典を明記して具体的な数字を示しましょう。

業界団体の調査レポート、政府統計、商工会議所のデータなどが活用できます。

ターゲット顧客の絞り込み

多くの創業者が失敗するのが、ターゲット顧客の設定です。

抽象的な例(NG) 「20~40代女性」

これでは、あまりにも範囲が広すぎます。もっと絞り込む必要があります。

具体的な例(Good) 「名古屋市中区で一人暮らしをする30代女性。健康志向で外食が多く、月に2万円以上を外食に使っている。忙しくて自炊する時間がないが、栄養バランスは気にしている」

ここまで絞り込むことで、どのような商品・サービスを提供すべきか、どのような販促をすべきかが明確になります。

競合分析の書き方

競合分析では、近隣店舗やオンラインサービスなど、実際に顧客を奪い合う相手を具体的に挙げます。

そして重要なのは、競合の弱点に対して「自社の強み」で補完する構成にすることです。

「競合A店は価格が安いが、提供時間が長く、味のバリエーションが少ない。当店は、価格はやや高めだが、注文から5分以内の提供と、10種類以上の日替わりメニューで差別化を図る」

このように、競合との違いを明確にすることで、なぜ顧客が自社を選ぶのかを説明できます。

競合分析について詳しくはこちら


後編へ続く

前編では、事業計画書の必要性、基本構成、そして事業内容の書き方について解説しました。

後編では、最も重要な「売上計画・利益計画」「資金計画」、そして「公庫の審査官が見ている評価ポイント」と「よくある失敗例」について詳しく解説します。

後編を読む

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です