【後編】創業者向けの「事業計画書」書き方完全ガイド

前編のおさらい

前編では、事業計画書が「融資のために仕方なく書くもの」ではなく、「自分のビジネスを成功させるための設計図」であることを解説しました。

また、創業動機、商品・サービス内容、市場・顧客・競合分析の書き方について、具体例を交えて説明しました。

後編では、いよいよ最も重要な「数字」の部分、そして審査で評価されるポイントと、よくある失敗例について解説します。

④ 売上計画・利益計画の組み立て方

事業計画書の中で、最も重要でありながら、多くの創業者が苦労するのが売上計画です。

売上の基本公式

売上は、以下の公式で計算されます。

売上 = 客数 × 客単価 × 来店(利用)頻度

この公式をベースに、具体的な数字を積み上げていきます。

売上目標の立て方について詳しくはこちら

売上根拠の作り方(飲食店の例)

例として、飲食店の売上計画を考えてみましょう。

周辺人口や歩行者数から客数を推定

  • 店舗前の平日通行量:約500人/日
  • そのうち飲食需要:10%(50人)
  • 自店への来店率:4%(2人)

類似店舗の客単価を調査

  • 近隣の同業態店舗:平均1,200円
  • 当店の想定:1,500円(やや高めの価格設定)

席数・回転数を根拠にする

  • 座席数:20席
  • ランチ回転数:1.5回転(30人)
  • ディナー回転数:1回転(20人)
  • 営業日数:25日/月

これらの数字から、月商を計算します。

月商の計算例

  • ランチ:30人 × 1,000円 × 25日 = 75万円
  • ディナー:20人 × 2,000円 × 25日 = 100万円
  • 月商合計:175万円

このように、根拠を積み上げて計算することで、説得力のある売上計画になります。

経費の計算

売上と同じくらい重要なのが、経費の計算です。主な経費項目は以下の通りです。

  • 仕入(原価):売上の30~40%程度(飲食業の場合)
  • 人件費:正社員給与+パート・アルバイト+社会保険料
  • 家賃:固定費の中で最も大きい項目
  • 広告費:開業当初は売上の10~15%を確保
  • 水道光熱費:業種によって大きく異なる
  • ロイヤリティ:フランチャイズの場合

注意点 特に人件費と水道光熱費は、想定より高くなりやすい項目です。余裕を持った見積もりをすることが重要です。

人件費は、単純な給与だけでなく、社会保険料(給与の約15%)や有給休暇、賞与なども考慮する必要があります。

⑤ 資金計画・資金繰り表の作り方

売上・経費の計画ができたら、次は資金計画です。

必要資金の内訳

開業に必要な資金は、大きく分けて以下の項目があります。

設備資金

  • 内装工事費
  • 厨房・什器備品
  • パソコン・レジなどのIT機器
  • 車両購入費

運転資金 開業後、売上が安定するまでの運転資金として、最低でも3ヶ月分を確保することを推奨します。できれば6ヶ月分あると安心です。

開業資金の調達方法について詳しくはこちら

返済額のシミュレーション

融資を受ける場合、月々の返済額も計画に組み込む必要があります。

例えば、1,000万円を年利2%、返済期間7年で借りた場合、月々の返済額は約12.5万円になります。この返済額を支払っても、手元に現金が残るかを確認することが重要です。

資金繰り表で現金残高を確認

資金繰り表とは、毎月の現金の動き(入金・出金)を記録し、月末の現金残高を把握する表です。

重要なのは、現金残高がマイナスにならないか確認することです。売上があっても、入金が翌月になる場合は、当月の支払いができない可能性があります。

日本政策金融公庫は、「余裕のある資金繰り」を高く評価します。ギリギリの計画ではなく、余裕を持った資金計画を立てましょう。

⑥ 公庫の審査官が見ている”評価ポイント”【最重要】

ここが最も重要なセクションです。どれだけ立派な事業計画書を作っても、審査で評価されなければ融資は受けられません。

創業動機が明確で、現実的か

審査官は、「この人は本気で事業をやろうとしているのか」「思いつきではないか」を見ています。

創業動機が具体的で、市場ニーズと結びついており、実現可能性があるかを評価します。

数字に裏付けがあるか

「なんとなく月商100万円」という計画では通りません。客数・客単価・営業日数などを積み上げて計算した根拠が必要です。

また、売上だけでなく、経費の見積もりも根拠が必要です。「家賃はいくら」「人件費は何人でいくら」といった具体的な数字を示しましょう。

技術・経験・資格の有無

その事業を行うための技術、経験、資格があるかは非常に重要です。

未経験の分野での開業は、リスクが高いと判断されます。もし未経験の場合は、協力者や指導者の存在を明確にする必要があります。

返済能力(利益・資金繰り)

最終的に、審査官が最も重視するのは「貸したお金を返せるか」です。

利益がきちんと出る計画になっているか、返済額を支払っても資金繰りが回るかを厳しくチェックされます。

自己資金の妥当性

自己資金が総資金の1/10以上(できれば20~30%)あるか、そしてその自己資金が計画的に貯めたものかを確認されます。

直前に誰かから借りたお金を「自己資金」として申告しても、通帳の履歴からすぐに見抜かれます。

事業実行力(過去の経歴含む)

過去の経歴から、計画を実行する能力があるかを判断されます。

  • 同業種での勤務経験
  • マネジメント経験
  • 営業実績
  • 資格取得の努力

こうした要素が、事業実行力の証明になります。

審査で評価されるために

これらの評価ポイントを押さえた事業計画書を作ることは、一人では非常に難しいのが現実です。外部専門家のサポートを活用することで、審査官の視点を理解し、評価される計画書を作成できます。

中小企業診断士などの専門家は、これらの評価ポイントを熟知しており、「ここは審査で必ず質問される」「この表現では減点される」といった実務的なアドバイスができます。

⑦ よくある失敗例と改善策

最後に、私がこれまで見てきた失敗事例と、その改善策をご紹介します。

失敗例①:売上が希望的観測

失敗パターン 「頑張れば月商300万円はいけると思います」という根拠のない計画。

改善策 客数・客単価・営業日数などを具体的に積み上げて計算する。競合店の実績や業界データを参考にする。

失敗例②:顧客ターゲットが曖昧

失敗パターン 「20~50代の男女全般」のように、ターゲットが広すぎる。

改善策 年齢、性別、居住地、職業、ライフスタイル、抱えている課題まで、具体的に絞り込む。

失敗例③:経費の見積もりが甘い

失敗パターン 人件費や水道光熱費を過小評価し、実際には利益が出ない計画になっている。

改善策 各経費について、見積もりを取る。特に人件費は社会保険料も含めて計算する。同業者や業界データを参考にする。

失敗例④:自己資金の不足

失敗パターン 自己資金が総資金の5%程度しかなく、ほぼ全額を融資に頼ろうとしている。

改善策 最低でも総資金の1/10、できれば20~30%の自己資金を用意する。足りない場合は、開業時期を延ばして貯蓄期間を確保する。

失敗例⑤:事業計画と実際の行動が一致しない

失敗パターン 計画書には「徹底した顧客分析を行う」と書いているのに、実際には何もしていない。面談で質問されて答えられない。

改善策 計画書に書いたことは、実際に行動に移す。市場調査、競合店視察、試作品の作成など、計画の裏付けとなる行動を取る。

改善の鍵は「数字を用いた裏付け」

これらの失敗例に共通するのは、「感覚」や「希望」で計画を立ててしまっていることです。

改善策として、「数字を用いた裏付け」を徹底することが重要です。そして、自分では気づかない弱点を指摘してもらうために、専門家のチェックを受けることを強くお勧めします。

まとめ:外部専門家の有効活用が成功の鍵

事業計画書は、融資を受けるために必要なだけでなく、あなたのビジネスを成功に導くための設計図です。

しかし、初めて事業計画書を作る方、あるいは一度作ったものの不安を感じている方にとって、審査で評価される計画書を作ることは容易ではありません。

  • 売上計画の根拠が十分か
  • 競合分析は適切か
  • 資金繰りは問題ないか
  • 審査官が見るポイントを押さえているか

こうした疑問を、一人で解決するのは非常に難しいのです。

だからこそ、外部専門家の有効活用が重要になります。中小企業診断士などの専門家は、審査官の視点を理解しており、あなたの事業計画書を客観的にチェックし、改善点を指摘できます。

「専門家に頼むと費用がかかる」と躊躇する方もいらっしゃいますが、不採択になって起業のタイミングを逃すコスト、何度も書き直す時間的コストを考えると、専門家への投資は決して高くありません。

一人で悩まず、専門家の力を借りながら、審査に通る事業計画書を作成し、あなたのビジネスを成功に導きましょう。


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