補助金と融資を併用する際の注意点とスケジュール管理
はじめに:資金調達の選択肢を増やす賢い方法
「補助金を申請したいけど、先に支払いが必要で資金が足りない」「融資を受けるか、補助金を待つか、どちらにすべきか悩んでいる」——そんな相談を受けることがよくあります。
実は、補助金と融資は併用が可能です。そして、正しく理解して併用すれば、資金調達力を最大化できる強力な手法になります。
しかし、多くの経営者が「補助金と融資を同時に使うのは二重取りになるのでは?」「どちらを先に申請すべきか」といった疑問や誤解を持っています。
私がこれまで多くの事業者の資金調達を支援してきた経験から言えるのは、融資と補助金は目的も審査基準も全く違う制度であり、正しく理解して併用することで、事業の成長スピードを大きく加速できるということです。
本記事では、補助金と融資を併用する際の注意点とスケジュール管理について、実務的な視点で解説します。
① 融資と補助金は併用可能?目的と仕組みの違いを理解する
結論:併用は可能。ただし「使い方」と「支払い時期」に注意
まず結論からお伝えすると、**融資と補助金の併用は完全に可能です。**ただし、それぞれの仕組みを正しく理解し、「使い方」と「支払い時期」に注意が必要です。
補助金は「後払い方式(精算払い)」が基本
補助金の最も重要な特徴は、**後払い方式(精算払い)**であることです。
具体的な流れは以下の通りです。
- 補助金に採択される
- 交付決定を受ける
- 先に事業者が自己資金で支払う
- 支払いの証憑(領収書・請求書など)を提出
- 実績報告を行う
- 補助金が後から交付される
つまり、補助金が入金されるのは、すべての支払いが完了した後です。例えば、100万円の設備投資に対して補助率2/3(約67万円)の補助金が採択されても、先に100万円を支払う資金が必要なのです。
この”つなぎ”として融資を利用するケースは非常に多い
この「先に支払いが必要」という補助金の仕組みがあるため、つなぎ資金として融資を利用するケースは非常に多いのです。
特に、小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金などでは、採択後すぐに設備購入や工事着工が必要になることが多く、自己資金だけでは賄えない場合があります。
金融機関も補助金採択を前向きに評価する
実は、金融機関は補助金の採択を前向きに評価することが多いのです。
なぜなら、補助金に採択されたということは、公的機関(国や自治体)が「この事業計画は妥当性が高い」と判断した証拠だからです。つまり、事業計画の信頼性が第三者によって保証されているわけです。
そのため、「補助金に採択されたので、つなぎ資金として融資を受けたい」という相談は、金融機関にとっても理解しやすく、審査でプラスに働くことが多いのです。
融資と補助金の根本的な違い
ここで、融資と補助金の根本的な違いを整理しておきましょう。
項目融資補助金性質借入金(返済義務あり)給付金(返済不要)審査基準返済能力・事業継続性事業の革新性・政策適合性入金時期審査通過後すぐ実績報告後(数ヶ月後)使途比較的自由申請内容に厳格に限定目的資金繰り支援特定政策の推進
このように、目的も審査基準も全く異なる制度です。だからこそ、それぞれの特性を活かして併用することが可能なのです。
② 併用時の注意点:二重取りリスクの正しい理解
併用において最も誤解が多いのが「二重取り」の問題です。正しく理解しておきましょう。
「二重取り」とは何か?
多くの方が誤解しているのですが、補助金対象経費の支払いに融資を使うことは「二重取り」ではありません。
本来の二重取りとは、**「同じ経費に対して、複数の補助金の助成を受けること」**を指します。
二重取りではないケース(誤解されがちな例)
具体例で見てみましょう。
例:機械100万円を購入
- 購入資金として融資100万円を受ける
- 自分で100万円を支払って機械を購入
- 補助金50万円が後から交付される
- 補助金50万円で融資の一部を返済
これは**『二重取り』ではなく、完全に合法**です。補助金関係機関も金融機関も問題ありません。
なぜなら、融資はあくまで「借入金」であり、補助金とは性質が異なるからです。融資は返済義務があり、補助金は返済不要です。この2つは重複しません。
本当に禁止されている「二重取り」
では、何が禁止されているのでしょうか。
禁止されているケース①:複数の補助金への重複申請
- 同じ設備投資費用を、小規模事業者持続化補助金とものづくり補助金の両方に申請し、重複して助成を受ける
- これは明確に禁止されています
禁止されているケース②:他の助成制度との重複
- 同じ人件費を、補助金と雇用関係の助成金(キャリアアップ助成金など)の両方で申請する
- 経費が重複する場合は禁止です
実務上の注意点
補助金の交付要領には、必ず「他の助成制度との重複不可」が明記されています。
不明な場合は、必ず補助金の事務局へ確認してください。意図しない重複を避けるため、申請書の経費内訳は整理しておくことが重要です。
補助金対象経費は「期間内に支払う」ことが大前提
もう一つ重要な注意点があります。
**補助金の対象となるのは「補助事業期間内に支払った費用」**です。期間外の支払いは対象外となります。
つまり、融資で「先に支払うだけ」なら併用は問題ありませんが、支払いのタイミングが補助事業期間外になると、補助金の対象から外れてしまいます。
ここが、次のセクションで解説する「スケジュール管理」が重要になる理由です。
融資を受ける理由を金融機関に正しく説明する
融資と補助金を併用する際、金融機関には「なぜ融資が必要なのか」を正しく説明する必要があります。
説明のポイント
- 補助金に採択されたこと
- 補助金は後払いのため、先に支払う資金が必要であること
- 補助金が入金されたら、融資の返済に充てること
- 資金繰り計画を具体的に示すこと
このように、資金の流れを明確に説明できれば、金融機関は安心して融資できます。
③ スケジュール管理と実務ポイント
補助金と融資の併用で最も重要なのが、スケジュールの組み方です。ここを間違えると、せっかくの補助金が使えなくなることもあります。
補助金の一般的な流れ
まず、補助金の一般的な流れを確認しておきましょう。
- 公募開始(例:5月頃)
- 申請書作成・提出(1~2ヶ月以内)
- 採択発表(申請から約1~2ヶ月後)
- 交付申請・交付決定
- 補助事業実施(支払い)
- 実績報告
- 補助金入金(実績報告から数ヶ月後)
全体で、公募開始から補助金入金までに半年~1年程度かかることが一般的です。
最大の落とし穴:「採択後すぐに支払いが必要なのに、融資が間に合わない」
私がこれまで支援してきた中で、最も多いトラブルが**「採択後すぐに支払いが必要なのに、融資が間に合わない」**というケースです。
例えば:
- 7月に採択発表
- 8月中に設備を購入・支払いしなければならない
- しかし、融資の申請を採択後に始めたため、審査・実行が9月になってしまう
- 結果、自己資金が足りず、補助事業が実施できない
こうなると、せっかくの採択が無駄になってしまいます。
スケジュール最適化のポイント
このような事態を避けるための、スケジュール最適化のポイントをご紹介します。
ポイント①:融資は採択前に準備を進める
最も重要なのは、融資の準備を採択前から進めておくことです。
具体的には:
- 補助金の申請と同時期に、融資の相談も開始する
- 金融機関へ「補助金申請中であること」を伝えておく
- 採択発表後、すぐに正式申請できる状態にしておく
「採択されるかわからないのに、融資の相談をしていいのか?」と心配する方もいますが、問題ありません。むしろ、計画的に動いている経営者として、好印象を与えます。
ポイント②:採択発表後に必要書類をすぐ提出できる状態にする
融資に必要な書類(事業計画書、見積書、決算書など)は、採択前に準備しておきましょう。
採択発表後、すぐに提出できれば、融資実行までの期間を大幅に短縮できます。
ポイント③:実績報告の期限を逆算して、支払いタイミングを調整する
補助金には、実績報告の期限があります。この期限から逆算して、支払いのタイミングを調整する必要があります。
例えば:
- 実績報告期限:12月末
- 支払い完了・証憑整理:12月中旬まで
- 実際の支払い:11月末まで
- 融資実行:11月初旬まで
このように、逆算してスケジュールを組むことが重要です。
補助金は”採択後が本番”
多くの事業者が、「採択されたらゴール」と考えがちですが、実は補助金は採択後が本番です。
採択後に:
- 交付申請を行う
- 補助事業を実施する(支払いを行う)
- 実績報告を行う
- 場合によっては現地調査を受ける
これらすべてを、決められた期間内に完了させる必要があります。そして、資金が動くのはすべて採択後です。
融資はそれを支える”前準備”として動かす必要があるのです。
実務上のチェックリスト
最後に、補助金と融資を併用する際の実務チェックリストをご紹介します。
□ 補助金の公募要領を熟読し、補助事業期間を確認した
□ 金融機関に補助金申請の旨を事前に伝えた
□ 融資に必要な書類を準備した
□ 採択発表から支払い期限までの期間を把握した
□ 融資実行から補助金入金までの資金繰り計画を作成した
□ 他の補助金・助成金との重複がないことを確認した
□ 専門家(中小企業診断士・行政書士など)に相談した
これらをチェックすることで、スムーズな併用が可能になります。
まとめ:正しく併用すれば、資金調達力は最大化できる
補助金と融資は、目的も審査基準も全く違う制度です。しかし、だからこそ、それぞれの特性を理解して併用すれば、資金調達力を最大化できる強力な手法になります。
重要なポイントのおさらい
- 融資と補助金の併用は完全に合法。「二重取り」の誤解を解く。
- 補助金は後払い。つなぎ資金として融資を使うのは一般的。
- スケジュール管理が最重要。採択前から融資の準備を進める。
- 資金の流れを明確に説明できれば、金融機関も安心して融資できる。
併用のメリットを最大化するために
補助金と融資を併用することで、以下のメリットが得られます。
- 自己資金の負担を最小化できる
- 事業の成長スピードを加速できる
- キャッシュフローを安定化できる
- 計画の妥当性が第三者に証明される
しかし、これらのメリットを享受するためには、正しい知識と綿密なスケジュール管理が不可欠です。
一人で悩まず、専門家の力を借りよう
補助金と融資の併用は、制度が複雑で、スケジュール管理も緻密さが求められます。一人で進めようとすると、思わぬトラブルに遭遇することがあります。
**中小企業診断士や行政書士などの専門家に相談することで、スムーズな併用が可能になります。**特に、補助金申請から融資の相談、実績報告までを一貫してサポートできる専門家を選ぶことをお勧めします。
正しく理解して正しく実行すれば、補助金と融資の併用は、あなたの事業を大きく成長させる原動力になります。
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