補助金と融資を組み合わせた資金調達戦略
はじめに
中小企業の資金調達において、補助金と融資はそれぞれ重要な役割を果たします。しかし、多くの経営者が見落としているのが、この二つを戦略的に組み合わせることで得られる大きなメリットです。
本記事では、補助金と融資を効果的に併用する方法、そのタイミング、そして注意すべきポイントについて、実務の観点から詳しく解説していきます。
補助金と融資、それぞれの特性
資金調達戦略を考える上で、まず補助金と融資の特性を正確に理解しておく必要があります。
補助金の特性
補助金は返済不要という大きなメリットがある一方で、いくつかの制約があります。
最も重要なのが入金タイミングの問題です。補助金は「後払い」が原則であり、まず自己資金で事業を実施し、その後実績報告を経て補助金が支払われる仕組みになっています。
具体的なスケジュールを見てみましょう。小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金などの主要な補助金では、採択が決まってから実際に補助金が入金されるまで、一年以上かかる場合も珍しくありません。事業完了後の実績報告を提出してからでも、入金までおおむね1~2ヶ月程度の期間を要します。
つまり、1,000万円の事業に対して補助率3分の2(約667万円)の補助金が採択されたとしても、まず自己資金で1,000万円全額を支払い、その後ようやく667万円が入金されるという流れになるのです。
融資の特性
一方、融資は返済義務がありますが、資金が必要なタイミングで調達できるという即効性があります。審査に通れば、比較的短期間でまとまった資金を手にすることができます。
金利負担は発生しますが、現在の低金利環境下では年1~2%程度で調達できるケースも多く、事業の成長スピードを考えれば十分に許容できる水準と言えます。
また、融資実績を積み重ねることで金融機関との信頼関係が構築され、将来的により大きな資金調達が必要になった際に有利に働きます。
なぜ「併用」が有効なのか?
補助金と融資の併用、特に「補助金つなぎ融資」という手法が、なぜ多くの中小企業にとって有効なのでしょうか。
資金繰りの観点から
先ほど説明した通り、補助金を活用するには先に自己資金で事業を実施する必要があります。手元資金がない、あるいは乏しい場合には、補助金が実際に入ってくるまでの間、資金の手当てをしなければなりません。
ここで活用されるのが、金融機関からの「補助金つなぎ融資」です。補助金が入金されるまでの一時的な資金を借り入れで調達し、補助金が入ってきた時点で借入金を一括返済するという方法です。
金融機関にとっても融資しやすい
補助金つなぎ融資は、通常の融資と比べて金融機関にとってもリスクが低い案件です。なぜなら、返済原資(何を根拠に返済しようとしているのか)が明確で、その相手は国や自治体といった公的機関だからです。
補助金採択通知書という確実な返済原資の証明があるため、銀行としても安心して融資できるのです。
融資実績の構築
実は、手元資金で対応可能な場合でも、あえてつなぎ融資を実行し返済するメリットがあります。それは借入実績を作れるということです。
金融機関との取引実績がない、あるいは少ない企業の場合、いきなり大きな金額の融資を申し込んでも審査に通りにくいのが現実です。しかし、補助金つなぎ融資で確実に返済した実績があれば、以降に大きな借入を行う場合に有利に働きます。
「この会社は計画通りに事業を実行し、きちんと返済してくれる」という信頼が構築されるのです。
補助金つなぎ融資の実務
補助金つなぎ融資の具体的な条件について見ていきましょう。
金利と融資期間
つなぎ融資の金利水準は、企業の財務状況によって決まります。すでに既存の借入がある場合は、その金利水準をベースに検討されることが一般的です。財務状況が良好な企業であれば、年1%台前半での調達も十分可能です。
融資期間については、補助金の入金予定日までが期日として設定されます。例えば、6ヶ月後に補助金が入金される見込みであれば、融資期間は6ヶ月となります。
金融機関によって条件に多少の差はありますが、補助金つなぎ融資という性質上、大きな違いはありません。
返済方法の違い
返済方法については、金融機関によって若干の違いがあります。
信用金庫や地方銀行の場合 多くのケースで、補助金入金までは利息のみを支払い、元金は補助金入金時に一括返済するという方法が採用されます。この方法であれば、補助金が入るまでの間の資金負担を最小限に抑えることができます。
日本政策金融公庫の場合 毎月元利返済(元金と利息の両方を返済)で進め、補助金入金時に残金を繰上返済するというパターンもあります。この場合、毎月の返済負担は発生しますが、計画的に返済を進められるというメリットがあります。
どちらの方法が適しているかは、企業の資金繰り状況によって判断すべきでしょう。
タイミングの取り方:先に補助金?融資?
補助金申請と融資申込のタイミングについては、企業の財務状況によって戦略が大きく異なります。
手元資金に余裕がない場合
手元資金に余裕がなく、つなぎ融資の実行が前提となっている場合は、補助金申請前に金融機関へタッピング(事前の相談)をしておく必要があります。
なぜなら、仮に補助金が採択されたとしても、その後に融資が通らなければ補助事業を実施できないからです。採択されたのに事業を実施できないという事態は、何としても避けなければなりません。
金融機関への事前相談の進め方
タッピングの段階では、詳細な事業計画書が完成している必要はありません。足元の業況が分かる資料(直近の試算表や資金繰り表など)と、大まかな補助事業の内容が分かるような資料があれば、まずは相談を始められます。
金融機関の担当者に伝えるべき内容は以下の通りです。
- どの補助金に申請する予定か
- 事業の概要(何をするのか)
- 必要な資金の総額と補助金額
- 事業実施のタイミングと補助金入金の見込み時期
- 自社の財務状況と返済能力
この段階で融資の可能性について感触を得ておくことで、安心して補助金申請に臨むことができます。
自己資金に余裕がある場合
逆に、自己資金でも十分に資金繰り可能な場合は、とりあえず補助金申請を優先的に行って問題ありません。採択後に、つなぎ融資を活用するかどうかを改めて検討すればよいでしょう。
ただし、前述の通り、融資実績を作るという観点からは、資金に余裕がある場合でもあえてつなぎ融資を活用する戦略もあります。
併用時の注意点
補助金と融資の併用には大きなメリットがある一方で、注意しなければならないポイントもあります。
資金ショートのリスク
最も注意すべきは、融資が思うように通らないにもかかわらず、補助事業が先行してしまう場合です。
「補助金が採択されたから」と安心して事業を開始してしまい、その後融資の審査が通らないと判明したケースでは、資金の当てがない中でさまざまな支払いが発生してしまいます。最悪の場合、資金ショートに陥る危険性があるのです。
これを防ぐためには、補助金採択後すぐに融資の正式申込を行い、融資実行の目処が立ってから補助事業を開始するという慎重な進め方が求められます。
二重取りのリスク
もう一つの重大な注意点が、補助金と融資の二重取りリスクです。
補助金のつなぎ融資は、補助金の入金に合わせて返済を行うのが通常です。しかし、別途長期資金を調達する場合には、経費の重複に十分注意が必要です。
二重取りになるNGケース
例えば、ものづくり補助金で1,000万円の設備導入費用(補助額667万円)の採択を受けた場合を考えてみましょう。このとき、銀行から同一の設備に対する長期借入金1,000万円を調達してしまうと、同一経費に対する二重取りとなり、不正受給の対象となります。
補助金で667万円、自己資金で333万円という建付けにもかかわらず、全額を融資で調達してしまうと、実質的に自己負担がゼロになってしまい、制度の趣旨に反するのです。
適切な併用ケース
では、どのような組み合わせであれば問題ないのでしょうか。いくつかの適切な例を見てみましょう。
例1:対象経費が異なる場合
- 補助金:新規設備の購入費用(1,000万円のうち補助額667万円)
- つなぎ融資:補助金入金までの一時的な資金667万円(入金後に一括返済)
- 長期融資:自己負担分333万円 + 同時期に必要な運転資金500万円
この場合、長期融資は自己負担分と別の目的(運転資金)に充てられており、補助対象経費との重複はありません。
例2:時期や目的が異なる場合
- 補助金:既存店舗の改装費用(つなぎ融資で対応→補助金入金後に返済)
- 長期融資:改装とは別の新規2号店出店資金
このように、補助事業と融資の使途が明確に分かれていれば問題ありません。
重要なのは、補助対象経費と融資の資金使途が重複しないこと、そしてそれを明確に説明できることです。不安がある場合は、必ず専門家に相談しましょう。
専門家の活用タイミングとポイント
補助金と融資を戦略的に組み合わせるには、さまざまな知識と経験が必要です。ここでは、専門家を活用すべきタイミングとそのメリットについて解説します。
相談すべきタイミング
専門家への相談は、補助金の応募締切2~3ヶ月前、つまり計画段階がベストタイミングです。
この段階であれば、事業計画の練り直し、補助金と融資の組み合わせ方の検討、金融機関への事前相談の準備など、十分な時間をかけて戦略を立てることができます。
実際には、補助金の公募開始後に相談に来られる経営者の方も多くいらっしゃいます。確かに時間的には厳しい状況ですが、専門家のサポートがあれば間に合う場合もあります。「もう遅いかもしれない」と諦めず、まずは相談してみることをお勧めします。
専門家が提供できる支援内容
中小企業診断士などの専門家は、以下のような一貫したサポートを提供できます。
補助金申請書の作成支援 採択率を高めるための事業計画の組み立て、申請書の作成、必要書類の整備など、補助金申請に関する全般的なサポートを行います。
資金調達計画の策定 補助金と融資をどのように組み合わせるか、タイミングをどう設定するか、といった資金調達の全体戦略を一緒に考えます。
金融機関との調整 金融機関への説明資料の作成、同行訪問、交渉のサポートなど、融資獲得に向けた実務的な支援を提供します。
事業計画のブラッシュアップ 補助金申請だけでなく、中長期的な経営視点から事業計画全体を見直し、より実現可能性の高い計画に仕上げていきます。
プラスワンマネジメントの支援体制
プラスワンマネジメントでは、中小企業診断士として、補助金申請書作成から事業計画策定、金融機関との調整まで、資金調達に関する一貫したサポートを提供しております。
愛知県を中心とした東海地区の中小企業・個人事業主の皆様の、良き相談相手・右腕として、経営者の想いの実現をサポートいたします。
料金体系や具体的なサービス内容については、料金ページをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。
まとめ:戦略的な資金調達で事業成長を加速する
補助金と融資を戦略的に組み合わせることで、以下のようなメリットが得られます。
- 資金繰りの安定化:補助金の後払いによる資金負担を軽減
- 確実な事業実行:必要な資金を適切なタイミングで確保
- 金融機関との信頼構築:融資実績を積み重ねて将来の資金調達を有利に
- 事業成長の加速:資金制約を理由に機会を逃さない
ただし、併用には注意点もあります。
- タイミングを誤ると資金ショートのリスクがある
- 二重取りにならないよう、資金使途を明確に区分する必要がある
- 金融機関への事前相談(タッピング)が重要
これらのポイントを押さえ、専門家のサポートも活用しながら進めることで、補助金と融資を効果的に組み合わせた資金調達が実現できます。
資金調達は経営の重要な要素ですが、それ自体が目的ではありません。調達した資金をいかに事業成長につなげるか、そのための戦略的な資金調達計画を、ぜひ専門家と一緒に考えてみてください。
補助金と融資の組み合わせでお困りの方へ
プラスワンマネジメントでは、補助金申請から融資獲得、事業計画の策定まで、トータルでサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。


