【後編】最短ルートで建設業許可を取得する方法と取得後の義務

はじめに ―確実かつスピーディーに許可を取得するために―

前編では、個人事業主が建設業許可を取得するための3つの主要要件(経営業務管理者・専任技術者・財務要件)と、個人事業主特有の課題について解説しました。

後編では、実際に許可申請を進める際の最短ルート、必要書類の準備方法、そして許可取得後に求められる各種義務について、愛知県での申請を中心に具体的にご説明します。建設業許可は取得して終わりではなく、取得後も適切な管理が必要です。後編を読むことで、申請から許可取得後の運用まで、一連の流れを理解していただけます。


1. 最短取得ルートの設計

建設業許可の申請から許可取得までは、通常30日から45日程度の審査期間がかかります。愛知県の場合、知事許可(愛知県内のみに営業所がある場合)であれば、申請から約30日前後で許可が下りるケースが多いですが、書類に不備があると補正や再提出を求められ、さらに時間がかかることになります。

最短で許可を取得するためには、事前準備を徹底し、一発で受理される完璧な申請書類を整えることが何より重要です。

申請前の事前確認チェックリスト

許可申請の前に、まず自社が要件を満たしているかを正確に確認する必要があります。以下のチェックリストを活用してください。

経営業務管理者の要件チェック

  • 経営経験の年数は足りているか(5年または6年)
  • 経営経験を証明する確定申告書は揃っているか
  • 各年度の工事実績を証明する契約書類はあるか

専任技術者の要件チェック

  • 国家資格を保有しているか、または実務経験年数は足りているか
  • 資格証明書または実務経験証明書類は揃っているか
  • 専任技術者は営業所に常勤できる体制か

財務要件チェック

  • 純資産500万円以上、または預金残高500万円以上を証明できるか
  • 青色申告で貸借対照表を作成しているか(純資産で証明する場合)
  • 残高証明書を取得する口座の残高は確保できているか

その他の要件チェック

  • 社会保険への加入は適切か(従業員がいる場合)
  • 営業所は実態のある事務所として機能しているか
  • 欠格要件(破産者等)に該当していないか

愛知県の場合、申請前に建設業課の窓口で事前相談を受け付けています。事前相談を活用することで、書類の不備や要件の不足を事前に指摘してもらえ、スムーズな申請につながります。

必要書類の効率的な準備

建設業許可申請には多岐にわたる書類が必要です。効率的に準備するために、書類を取得元別に整理します。

市区町村で取得する書類

  • 住民票の写し(本籍地記載、発行後3か月以内)
  • 身分証明書(本籍地の市区町村が発行、発行後3か月以内)

法務局で取得する書類

  • 登記されていないことの証明書(発行後3か月以内)

自社で準備する書類

  • 確定申告書の控え(直近1期分、経営経験証明用には5~6年分)
  • 工事請負契約書、注文書・請書(経営経験・実務経験の証明用)
  • 工事台帳、工事経歴書
  • 営業所の写真(外観・内観・看板等)
  • 賃貸借契約書(賃貸物件の場合)

金融機関で取得する書類

  • 残高証明書(申請日直近の日付、500万円以上)

社会保険関係

  • 健康保険・厚生年金保険の加入確認書類
  • 雇用保険・労災保険の加入確認書類(従業員がいる場合)

これらの書類を効率的に取得するコツは、「有効期限のある書類は最後に取得する」ことです。住民票や身分証明書、残高証明書などは有効期限が3か月以内と定められているため、他の書類を先に準備し、申請時期が確定してから取得しましょう。

愛知県での申請手続きの流れ

愛知県知事許可の場合、申請窓口は愛知県庁の建設業課または愛知県の各建設事務所です。営業所の所在地によって管轄が決まります。

申請の具体的な流れ

  1. 事前相談(任意だが強く推奨):愛知県建設業課の窓口で、書類の確認や要件の確認を行います。事前予約が必要な場合があるため、事前に電話で確認しましょう。
  2. 申請書類の提出:正本1部、副本1部の合計2部を提出します。申請手数料は、知事許可の一般建設業で90,000円です。手数料は愛知県収入証紙で納付します(収入証紙は県庁内や県の建設事務所で購入可能)。
  3. 形式審査:申請書類を提出すると、担当者による形式審査が行われます。書類に不備があると、その場で指摘されたり、後日補正を求められたりします。
  4. 本審査:形式審査を通過すると、本格的な審査に入ります。審査期間中、必要に応じて追加資料の提出や説明を求められることもあります。
  5. 許可通知:無事に審査を通過すると、許可通知書が送付されます。愛知県の場合、申請から約30日前後で許可が下りることが多いですが、申請時期や案件の複雑さによって前後します。

最短ルート実現のポイント

建設業許可を最短で取得するための重要ポイントをまとめます。

ポイント①:早期の書類整理開始 過去の経営経験や実務経験を証明する書類は、探すのに時間がかかることがあります。許可取得を決めたら、すぐに書類の確認を始めましょう。

ポイント②:事前相談の活用 愛知県の建設業課では事前相談を受け付けており、書類の不備や要件の不足を事前に指摘してもらえます。申請前に必ず相談に行くことで、一発受理の確率が高まります。

ポイント③:証明書類の取得タイミング 住民票や身分証明書などは有効期限が3か月以内と定められているため、早く取りすぎると期限切れになってしまいます。申請時期を見定めて、計画的に取得しましょう。

ポイント④:専門家の活用 行政書士などの専門家に依頼することも、確実性とスピードの両面から有効な選択肢です。特に、書類の不備による時間ロスを避けたい場合や、本業が忙しく申請準備に時間を割けない場合は、専門家への依頼を検討しましょう。


2. 許可取得後の義務と注意点

建設業許可を取得した後も、様々な義務が発生します。これらの義務を怠ると、許可の取消しや更新拒否につながる可能性があるため、十分な注意が必要です。

毎年必須:決算変更届(事業年度終了届)

建設業許可業者は、毎年、事業年度終了後4か月以内に「決算変更届」(正式名称:事業年度終了届)を提出する義務があります。個人事業主の場合、通常は12月31日が事業年度末となるため、翌年4月30日までに提出する必要があります。

決算変更届には、以下の書類を添付します。

  • 工事経歴書(完成工事高上位10件程度)
  • 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  • 財務諸表(貸借対照表・損益計算書等)
  • 事業報告書
  • 納税証明書

この決算変更届は、許可の更新時に過去5年分の提出が確認されます。1年でも提出を怠っていると、更新申請ができなくなる可能性があるため、毎年確実に提出することが極めて重要です。

また、決算変更届は単なる形式的な手続きではなく、経営状況の把握や経営事項審査(公共工事の入札参加に必要)の基礎資料としても重要な意味を持ちます。

変更が生じたら速やかに:各種変更届

建設業許可取得後、様々な事項に変更が生じた場合、変更届を提出する義務があります。

変更後30日以内に届出が必要な事項

  • 商号・名称の変更(屋号の変更など)
  • 営業所の所在地、名称、業種の変更
  • 営業所の新設・廃止
  • 資本金額の変更(法人の場合)

変更後2週間以内に届出が必要な事項

  • 経営業務管理者の変更・追加
  • 専任技術者の変更・追加
  • 令第3条に規定する使用人の変更

特に、専任技術者の変更には注意が必要です。専任技術者が退職や異動により変わった場合、速やかに後任を配置し届出をしなければなりません。専任技術者がいなくなると許可要件を満たさなくなり、最悪の場合、許可の取消し処分を受ける可能性があります。

5年ごとの更新申請を忘れずに

建設業許可の有効期間は5年間です。許可を継続する場合は、有効期間満了日の30日前までに更新申請を行う必要があります。

更新申請は新規申請と同様の書類が必要ですが、過去5年間の決算変更届の提出状況も確認されます。決算変更届を一度でも出し忘れていると、更新申請ができない可能性があるため、日頃からの適切な届出が重要です。

更新申請の手数料は、愛知県知事許可の場合50,000円です(新規申請時の90,000円より低額)。更新を忘れて許可が失効すると、再度新規申請からやり直しとなり、手数料も高くなります。更新時期が近づいたら、早めに準備を始めましょう。

その他の義務:標識の掲示と帳簿の保存

標識(看板)の掲示義務 建設業許可業者は、営業所および工事現場に、建設業許可を受けていることを示す標識を掲示する義務があります。標識には、商号・名称、代表者名、一般建設業または特定建設業の別、許可番号、許可年月日などを記載する必要があります。営業所用と工事現場用で様式が異なるため、それぞれ適切な標識を用意しましょう。

帳簿の備付け・保存義務 建設業許可業者は、営業所ごとに帳簿を備え付け、建設工事に関する事項を記載し、5年間保存する義務があります。個人事業主の場合も例外ではなく、各工事について工事内容、請負金額、着工日、完成日などを記録し、保存する必要があります。

これらの帳簿は、行政の立入検査や更新申請時に確認される可能性があるため、日常的に適切に記録・保存することが重要です。


おわりに ―確実な許可取得と適切な運用を―

個人事業主でも建設業許可の取得は十分に可能です。前編で解説した3つの主要要件をクリアし、本記事(後編)で説明した最短ルートに沿って準備を進めることで、スムーズに許可を取得することができます。

そして、許可取得後も毎年の決算変更届、必要に応じた変更届、5年ごとの更新申請など、継続的な管理が求められます。これらの義務を確実に履行することで、建設業許可を維持し、事業を安定的に成長させることができます。

建設業許可を取得し、500万円以上の工事を請け負えるようになることで、個人事業主の皆様のビジネスは大きく飛躍します。取引先からの信頼も向上し、公共工事への参入も可能になります。

愛知県をはじめとする東海地区で建設業を営む個人事業主の皆様が、建設業許可を取得し、事業を大きく発展させていくための一助となれば幸いです。

建設業許可の取得に関するご相談や申請代行をご希望の場合は、プラスワンマネジメントまでお気軽にお問い合わせください。中小企業診断士・行政書士として、許可取得から事業計画の策定、財務面でのサポート、そして取得後の決算変更届や変更届の提出まで、トータルでお手伝いいたします。

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