【前編】電子定款のメリットと法人設立の基本ステップ
はじめに ―法人設立のコストとスピードを最適化する―
会社設立を検討されている個人事業主や起業家の皆様にとって、「できるだけコストを抑えたい」「スムーズに設立を進めたい」というのは共通の願いではないでしょうか。法人設立には定款の作成が必須ですが、従来の紙の定款では印紙税4万円が必要でした。しかし、電子定款を利用することで、この4万円を削減でき、さらに手続きのスピードアップも実現できます。
本記事の前編では、法人設立の基本ステップから、電子定款とは何か、そのメリット、行政書士に依頼する利点まで解説します。
1. 法人設立の基本ステップ
法人を設立するには、定款を作成する前に、いくつかの重要事項を決定する必要があります。これらが整わないと定款を作れないため、まず以下の項目を確定させましょう。
商号(会社名)の決定
会社の名称を決定します。同一住所に同一商号がある場合は登記できないため、法務局で類似商号を調査することが重要です。会社名には「株式会社」「合同会社」などの法人格を含める必要があります。
さらに、会社のホームページを開設する予定であれば、ドメインの取得可能性も確認しておくと良いでしょう。せっかく決めた商号でも、ドメインが既に取得されていると、ウェブ展開に支障をきたします。
事業目的の記載
会社が行う事業内容を定款に記載します。将来行う可能性のある事業も含めて記載できますが、あまりに多すぎると散漫な印象を与えます。また、許認可が必要な事業(建設業、飲食業、介護事業など)を行う場合、事業目的の記載方法が許認可の要件に影響するため、非常に重要です。
ここが落とし穴:事業目的の記載が不適切だと、後から許認可が取得できない、融資審査に影響するなどの問題が発生します。専門家のチェックを受けることを強くおすすめします。
本店所在地
会社の本店(本社)の住所を決定します。自宅を本店所在地にすることも可能ですが、賃貸物件の場合、賃貸借契約書に「事業使用禁止」などの条項がないか確認が必要です。また、自宅住所を登記すると公開情報となるため、プライバシーを重視する場合はバーチャルオフィスやレンタルオフィスの利用も検討しましょう。
資本金額
会社の資本金額を決定します。資本金1円から設立可能ですが、取引先や金融機関からの信用を考えると、最低でも100万円以上が望ましいとされています。また、許認可によっては最低資本金が定められている場合があります(建設業許可では実質的に500万円以上の資金が必要など)。
資本金の額は、創業融資の審査にも影響します。自己資金が少ないと融資審査で不利になるため、事業計画と合わせて適切な資本金額を設定しましょう。
役員構成
取締役、代表取締役、監査役などの役員構成を決定します。株式会社の場合、取締役は最低1名必要で、取締役会を設置する場合は3名以上必要です。合同会社の場合は、代表社員を1名以上選任します。
2. 電子定款とは何か
電子定款とは、PDF形式のデータで作成する定款のことです。従来の紙の定款に代わる方式で、電子署名を使用することで、法務局が正式な定款として認める形式となります。
現在、法人設立における定款作成では、電子定款が一般的になっています。特に行政書士や司法書士に依頼する場合、ほぼすべてのケースで電子定款が使用されています。
電子定款の作成には、以下のものが必要です。
- PDF作成ソフト(Adobe Acrobat Proなど)
- 電子署名用のICカードリーダー
- マイナンバーカードまたは電子証明書
- 法務省の「登記・供託オンライン申請システム」の利用
個人で電子定款を作成する場合、これらの機器やソフトウェアを揃える必要があり、初期投資として3万円~5万円程度かかります。そのため、電子定款を1回だけ作成する場合は、行政書士に依頼した方がコストメリットがあるケースが多いです。
3. 電子定款のメリット(費用・スピード・正確性)
電子定款には、紙の定款と比較して多くのメリットがあります。
メリット①:印紙税4万円が不要
最も大きなメリットは、印紙税4万円が不要になることです。紙の定款を作成する場合、定款に4万円分の収入印紙を貼付する必要があります。しかし、電子定款の場合、印紙税法上の「文書」に該当しないため、印紙税がかかりません。
会社設立費用全体で見ると、株式会社の場合、公証人手数料5万円と登録免許税15万円(または資本金額の0.7%)は電子定款でも必要ですが、印紙税4万円が削減できるのは非常に大きなメリットです。
メリット②:作成スピードが早い
電子定款は、定款の作成、電子署名の付与、公証役場への送付、公証人による認証がすべてオンラインで完結します。事前に電子データを送付しておくことで、公証人が事前に内容を確認できるため、当日の手続きがスムーズに進みます。
メリット③:修正が容易でミスが少ない
紙の定款で誤字脱字や記載ミスがあった場合、訂正印を押す必要があり、訂正箇所が多いと見栄えが悪くなります。一方、電子定款であれば、データ上で修正して再度電子署名を付与するだけで済むため、修正が容易です。
メリット④:公証役場での待ち時間が短い
あらかじめ電子データを公証役場に送付しておくことで、公証人が事前に内容を確認できます。そのため、認証当日の待ち時間が短く、スムーズに手続きが進みます。
4. 電子定款作成を行政書士に依頼するメリット
電子定款の作成は自分でも可能ですが、行政書士に依頼することで、以下のメリットがあります。
定款内容をプロがチェック
特に「事業目的」の記載は、将来の許認可取得や融資審査に影響するため、専門家のチェックが重要です。行政書士は許認可の専門家であり、将来的に必要な許認可を見据えた適切な事業目的の記載をアドバイスできます。
例えば、建設業許可を取得する予定であれば、「建設工事の請負」という記載が必要です。飲食業であれば「飲食店の経営」、介護事業であれば「介護保険法に基づく○○事業」といった具体的な記載が求められます。
公証役場との連絡代行
公証役場への事前相談や日程調整、必要書類の確認など、煩雑なやり取りを行政書士が代行します。起業準備で多忙な時期に、これらの手続きを任せられるのは大きなメリットです。
設立後の手続きもまとめて対応可能
行政書士に依頼すれば、法人設立後に必要な許認可申請、届出、融資申請の準備なども一貫してサポートを受けられます。例えば、建設業許可、飲食店営業許可、創業融資の申請など、設立と同時に進めるべき手続きが多数あります。
設立のスピードが速い
行政書士は電子定款作成に必要な機器やソフトウェアをすでに保有しており、手続きに慣れているため、自分で行うよりも圧倒的にスピーディです。公証役場や法務局とのやり取りもスムーズで、最短で会社設立を実現できます。
前編のまとめ
法人設立には、商号、事業目的、本店所在地、資本金、役員構成の決定が必須です。電子定款を利用することで、印紙税4万円の削減、手続きのスピードアップ、ミスの減少など、多くのメリットが得られます。特に事業目的の記載は、将来の許認可取得に影響するため、専門家のチェックが重要です。
後編では、法人設立の具体的な流れ、よくあるトラブルと防止策、創業融資・補助金との連動メリットについて詳しく解説します。
【後編へ続く】
会社設立や電子定款作成に関するご相談は、プラスワンマネジメントまでお気軽にお問い合わせください。

