創業時に必ず行うべきSWOT分析のやり方|融資・補助金を突破する事業計画を作るために【前編】

はじめに:SWOT分析をしないまま創業すると何が起こるのか

創業予定の方、または創業して間もない方に質問です。「あなたの事業の強みを一言で説明してください」と聞かれたら、即答できるでしょうか?

多くの創業者が、この質問に明確に答えられません。なぜなら、自分の事業を客観的に分析する機会がないまま、アイデアと情熱だけで走り出してしまうからです。

私がこれまで多くの創業者を支援してきた中で確信していることがあります。それは、SWOT分析をしっかり行った人ほど、融資も補助金も通りやすく、そして事業も成功しやすいということです。

本記事では、創業時に必ず行うべきSWOT分析のやり方を、前編・後編に分けて徹底解説します。前編では、SWOT分析の基礎と正しい手順を学びます。

① なぜ創業時にSWOT分析を行う必要があるのか

創業者の多くはアイデア先行で事業計画が曖昧

「このサービスは絶対に売れる」「自分なら成功できる」——創業者の多くは、こうした確信を持っています。しかし、その根拠を問われると、曖昧な答えしか返ってこないことが多いのです。

アイデアと情熱は重要ですが、それだけでは事業は成功しません。客観的な分析に基づいた戦略が必要なのです。

金融機関は「事業が継続できるか」を最重視

日本政策金融公庫や民間金融機関が融資審査で最も重視するのは、「この事業は継続できるのか」という点です。

つまり、一時的に売れるアイデアではなく、継続的に利益を生み出せる事業かどうかを見ています。そして、それを証明するためには、自社の強みと市場環境を客観的に分析した証拠が必要です。

日本政策金融公庫の創業融資について詳しくはこちら

SWOT分析は「強みの言語化」ができる最強ツール

融資面談では、必ずと言っていいほど「あなたの強みを一言で言うと?」と聞かれます。この質問に、具体的かつ説得力を持って答えられるかどうかが、融資の可否を分けることがあります。

SWOT分析は、事業の生命線である「強みの言語化」を可能にします。そして、補助金の審査項目である「妥当性・必要性」とも完全に一致します。

SWOTが不十分=事業計画全体が弱い

逆に言えば、SWOT分析が不十分な事業計画書は、どれだけ他の部分を丁寧に作っても、全体として弱い印象を与えてしまいます。

**SWOT分析は、創業計画・融資・補助金をすべて貫く”事業の軸”**なのです。これをやらないと、計画書は弱くなり、融資・補助金に通りにくくなります。

② SWOT分析とは?4つの要素を正しく理解しよう

SWOT分析は、4つの要素から事業を分析するフレームワークです。

Strength(強み):他社より優れている点

内部要因であり、自社がコントロールできる優位性です。

具体例:

  • 技術力・職人としてのスキル
  • 業界での長年の経験
  • 保有する資格や免許
  • 既存の人脈・顧客基盤
  • 好立地の店舗
  • 独自の商品力・サービス

ポイントは、「他社と比較して優れている点」を具体的に挙げることです。

Weakness(弱み):改善が必要な内部要因

同じく内部要因で、自社がコントロールできる改善点です。

具体例:

  • 資金不足
  • 認知度の低さ
  • 特定のスキル不足
  • 人手不足
  • 設備の老朽化
  • ITスキルの不足

多くの創業者は、弱みを書きたがりません。しかし、真摯な弱み分析があると、金融機関は逆に安心します。「この経営者はリスクを理解している」と評価されるのです。

Opportunity(機会):追い風となる外部環境

外部要因で、自社ではコントロールできないが、活用できる環境の変化です。

具体例:

  • 市場の拡大(健康食品市場、リフォーム需要など)
  • 制度の変更(規制緩和、新たな補助金制度)
  • 補助金・助成金の募集
  • 地域の再開発や人口動態の変化
  • 技術革新(SNS、AI、DXなど)

機会をどれだけ具体的に捉えているかが、事業の成長可能性を示します。

Threat(脅威):逆風となりうる外部環境

同じく外部要因で、事業にマイナスの影響を与える可能性がある環境変化です。

具体例:

  • 競合の増加
  • 原材料費・人件費の高騰
  • 景気悪化
  • 人材不足
  • 技術革新による既存ビジネスの陳腐化

脅威を軽視する創業者は多いですが、リスク管理ができていないと融資に弱いのです。

内部と外部を混同する創業者が非常に多い

ここで重要なのは、内部要因(S・W)と外部要因(O・T)を混同しないことです。

例えば、「競合が少ない」は強み(S)ではなく、機会(O)です。自社でコントロールできるものではないからです。

この区別ができていないと、正しい戦略を立てられません。

③ 創業者が陥りやすい「間違ったSWOT分析」とは

SWOT分析をやっても、多くの創業者が陥る典型的な失敗パターンがあります。

失敗パターン①:強みが「一般論」になっている

よくある残念な例

  • 「お客様を大切にします」
  • 「丁寧な対応を心がけます」
  • 「高品質な商品を提供します」

これらは、どの事業者でも言えることで、差別化になりません。審査担当者は、こうした表面的な強みを一瞬で見抜きます。

改善例

  • 「お客様を大切に」→「顧客対応時間を業界平均の2倍確保し、リピート率65%を実現」
  • 「丁寧な対応」→「問い合わせに2時間以内に必ず返信する体制を構築」
  • 「高品質」→「不良品率0.5%(業界平均2%)を10年間維持」

具体的な数字や仕組みで裏付けることが重要です。

失敗パターン②:弱みを書きたがらない

「弱みを書くと評価が下がるのでは?」と心配して、弱みを書かない、または形式的にしか書かない創業者がいます。

しかし、これは逆効果です。弱みを正直に書き、それをどう補うかを示すことで、信頼性が高まります

例えば、「資金が潤沢ではないため、初期投資を抑えてスモールスタートし、黒字化を早期に実現する」のように、弱みへの対策を示すことが重要です。

失敗パターン③:機会(Opportunity)が曖昧

「市場が拡大している」とだけ書いて、具体的なデータや根拠がない場合、説得力がありません。

市場データ、地域性、制度などを基に、具体的に書くべきです。

改善例 「健康食品市場は2024年に前年比8%成長し、3兆円規模に達している(矢野経済研究所)。当店のターゲット層である40代女性の健康意識は特に高く、商圏内の潜在顧客は約5,000人と推計される」

失敗パターン④:脅威(Threat)を軽視/想定不足

「特に脅威はない」「競合は気にしていない」という創業者がいますが、これは危険信号です。

どんな事業にも脅威は存在します。それを認識していないということは、リスク管理ができていないと判断されます。

④ 正しいSWOT分析の手順【基礎編】

それでは、正しいSWOT分析の手順を見ていきましょう。

ステップ1:自分の過去(経験・スキル)を棚卸しする

まず、自分自身の経験・スキル・資格・人脈などを書き出します。

  • これまでどんな仕事をしてきたか
  • どんなスキルを身につけたか
  • どんな資格を持っているか
  • どんな人脈があるか
  • どんな実績を上げたか

この棚卸しが、強み(S)の基礎になります。

ステップ2:競合の特徴を書き出す

次に、競合他社の特徴を調査し、書き出します。

  • どんな商品・サービスを提供しているか
  • 価格帯はどうか
  • 強みは何か
  • 弱みは何か
  • 顧客層は誰か

競合との違いを明確にすることで、自社の強み(S)と差別化ポイントが見えてきます。

競合分析について詳しくはこちら

ステップ3:市場・地域特性や制度を調べる

外部環境を調査します。

  • 市場規模と成長率
  • 地域の人口動態
  • 補助金・助成金の有無
  • 規制の変化
  • 技術革新の動向

これが機会(O)と脅威(T)の基礎になります。

ステップ4:内部要因と外部要因を分類

集めた情報を、内部要因(S・W)と外部要因(O・T)に分類します。

分類のポイント

  • 自社でコントロールできる→内部要因(S・W)
  • 自社ではコントロールできない→外部要因(O・T)

この分類を間違えると、戦略も間違えます。

ステップ5:SWOTマトリクスに落とし込む

4つの要素を、SWOTマトリクス(2×2の表)に整理します。

【内部要因】
強み(S) | 弱み(W)
---------|---------
【外部要因】
機会(O) | 脅威(T)

視覚的に整理することで、全体像が見えやすくなります。


前編のまとめ

前編では、SWOT分析の必要性と基本的な理解、そして正しい手順の基礎部分を解説しました。

  • SWOTは創業計画・融資・補助金をすべて貫く”事業の軸”
  • 内部要因と外部要因の区別が重要
  • 表面的なSWOTは審査担当者に見抜かれる
  • 正しい手順で情報を集め、分類することが第一歩

後編では、最も重要な「戦略への落とし込み方」と「業種別の具体的なSWOT分析実例」、そして「融資・補助金での活用法」について詳しく解説します。

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