初めての事業計画書:完璧を求めず「まず形にする」ための7つの必須項目【後編】
前編のおさらい
前編では、事業計画書を書き始められない心理的ハードルを下げ、事業の「言語化」に必要な3つの項目(事業概要、商品・サービス内容、市場・顧客)を解説しました。
後編では、初心者が最も苦手とする「数字」の項目と、経営者の経歴の書き方を、わかりやすく説明します。
必須項目④:売上計画【最重要】
多くの方が最も悩むのが、この売上計画です。しかし、基本を押さえれば、決して難しくありません。
積み上げの基本
売上計画の基本は、「積み上げ」です。
基本の公式 売上 = 客数 × 客単価 × 営業日数
この公式をベースに、具体的な数字を当てはめていきます。
記載イメージ(飲食店の例) 「1日あたり50人の来客を見込みます。客単価は1,000円、営業日は月25日です。 月商:50人 × 1,000円 × 25日 = 125万円 年商:125万円 × 12ヶ月 = 1,500万円」
最初は、「だいたいこれくらい来てくれるだろう」という感覚でかまいません。後から、競合店の調査や地域の人口データなどで精度を上げていけばよいのです。
初年度は控えめに
重要なポイントがあります。初年度の売上は、控えめに設定することです。
開業直後は認知度がなく、顧客もついていません。いきなり満席、という想定は現実的ではありません。
記載イメージ 「開業初月は準備期間もあり、客数は1日20人程度と想定。2ヶ月目以降、徐々に認知度が上がり、半年後には1日50人を目指します」
このように、段階的に増えていく計画の方が、現実的で信頼されます。
数字に自信がなくても大丈夫
「でも、本当にこの数字で合っているかわからない」——そう思うのは当然です。
実は、**創業前の売上計画は、誰も正確には予測できません。**金融機関もそれを理解しています。
重要なのは、「根拠を持って説明できるか」です。「なぜこの客数なのか」「なぜこの単価なのか」を、自分なりの言葉で説明できれば十分です。
必須項目⑤:経費計画
売上計画ができたら、次は経費計画です。
固定費・変動費の整理
経費は、大きく2つに分けて考えます。
固定費:売上に関係なく毎月かかる費用
- 家賃
- 正社員の給与
- 保険料
- リース料
変動費:売上に応じて変動する費用
- 仕入・材料費
- パート・アルバイトの人件費
- 光熱費
- 広告費
記載イメージ 「固定費:
- 家賃:15万円/月
- 給与(自分):20万円/月
- 保険料:3万円/月
- 合計:38万円/月
変動費:
- 仕入:売上の35%(約44万円/月)
- パート代:5万円/月
- 光熱費:3万円/月
- 合計:52万円/月
月間経費合計:90万円」
最初は大まかでかまいません。項目ごとに「だいたいこれくらい」という金額を書き出してみましょう。
見落としやすい項目
初めての方が見落としやすい経費項目をご紹介します。
- 社会保険料:従業員を雇う場合、給与の約15%
- 広告宣伝費:特に開業初年度は重要
- 消耗品費:意外とかさむ
- 修繕費:設備の修理・メンテナンス
- 雑費:予備費として、経費の5~10%程度
これらを忘れずに計上しておくことで、より現実的な計画になります。
必須項目⑥:資金計画・資金使途
次に、開業に必要な資金と、その使い道を整理します。
借入金の使い道
金融機関が最も重視するのが、「借りたお金を何に使うのか」です。
記載イメージ 「開業資金:800万円
内訳: 【設備資金】500万円
- 内装工事:300万円
- 厨房設備:150万円
- 備品購入:50万円
【運転資金】300万円
- 仕入資金(3ヶ月分):150万円
- 広告宣伝費:50万円
- 家賃・人件費(3ヶ月分):100万円
調達方法:
- 自己資金:300万円
- 融資:500万円」
このように、「何にいくら使うのか」を具体的に示すことが重要です。
手元資金の考え方
もう一つ重要なのが、「手元にどれだけ現金を残すか」です。
開業直後は予想外の出費が発生します。また、売上が計画通りにいかないこともあります。最低でも3ヶ月分の運転資金を手元に残しておくことをお勧めします。
記載イメージ 「開業資金800万円のうち、実際に使用するのは700万円。残り100万円は予備費として手元に残します」
この「余裕」があることで、金融機関も安心して融資できます。
必須項目⑦:経営者の経歴
最後に、あなた自身について書きます。
強みをどう見せるか
経営者の経歴で重要なのは、「なぜあなたがこの事業をやるのか」を示すことです。
書き方のポイント
- これまでの職歴
- 持っている資格・スキル
- 事業に活かせる経験
- 人脈・顧客基盤
記載イメージ 「私は管理栄養士として、病院で15年間勤務してきました。栄養指導の経験から、健康的な食事の重要性を実感し、もっと多くの人に提供したいと考え、開業を決意しました。既存の患者様から『弁当を作ってほしい』という声もいただいており、初期顧客の見込みもあります」
職歴と事業内容が結びついていることが、説得力を生みます。
未経験の場合の補足方法
「でも、この業界は未経験なんです」——そういう方もいるでしょう。
その場合は、どうやって未経験をカバーするのかを書きましょう。
記載イメージ 「飲食業は未経験ですが、以下の方法で不足を補います:
- 知人の飲食店経営者に月2回の相談を依頼
- 飲食業の研修セミナーに3回参加済み
- 開業前に2ヶ月間、知人の店舗でアルバイト予定」
このように、弱みを認識し、それを補う努力をしていることを示すことで、逆に信頼性が高まります。
まとめ:完璧を求めず、まず形にすることから
7つの必須項目を解説してきましたが、いかがでしたか?
重要なポイントのおさらい
- 完璧を求めない:最初は下書きレベルで十分
- 事業を一文で説明できる:これが計画書の骨格
- ターゲットを絞る:誰に向けたサービスかを明確に
- 売上は積み上げで考える:客数×単価×日数
- 初年度は控えめに:段階的に増える計画が現実的
- 経費の見落としに注意:固定費と変動費を整理
- 資金使途を具体的に:何にいくら使うかを明示
- 弱みも正直に書く:補完策を示すことで信頼性UP
今日からできること
まず、紙でもWordでもよいので、7つの項目の見出しだけ書いてみてください。
そして、書けるところから埋めていきましょう。1日で完成させる必要はありません。少しずつ、自分のペースで進めてください。
数字に自信がなければ、「仮置き」と書いておけばよいのです。後から修正すればよいのです。
形にした人から、前に進めます。
一人で悩まず、専門家の力を借りよう
「どうしても書き始められない」「この内容で大丈夫か不安」——そう感じたら、専門家に相談するのも一つの方法です。
中小企業診断士などの専門家は、あなたの話を聞きながら、事業計画書の形にするサポートができます。一人で悩んで時間を無駄にするより、専門家と一緒に進める方が、はるかに効率的です。
完璧な計画書ではなく、あなたらしい事業計画書を作ることが大切です。
初めての事業計画書作成でお悩みの方へ
「何から書き始めればいいかわからない」 「数字に自信がない」 「この内容で金融機関に通るか不安」 「一人で作るのが不安」
そんなお悩みをお持ちの方を、私たちは全力でサポートいたします。
中小企業診断士として、これまで数多くの「初めての事業計画書」作成を支援してきました。あなたのペースに合わせて、一緒に形にしていきます。
完璧を求めず、まず形にすることが第一歩です。

