初めての事業計画書:完璧を求めず「まず形にする」ための7つの必須項目【前編】
はじめに:形にした人から前に進める
「事業計画書を作らなければいけないけど、何から書けばいいかわからない」「完璧なものを作らないと、融資に通らないのでは?」——初めて事業計画書を作る方の多くが、こうした不安を抱えています。
私がこれまで多くの創業者を支援してきた中で、強く感じることがあります。それは、完璧を求めすぎて、いつまでも書き始められない人が非常に多いということです。
しかし、真実をお伝えします。事業計画書は「完成品」を出す書類ではありません。最初は”下書きレベル”で十分です。形にした人から前に進めるのです。
本記事では、初めて事業計画書を作る方が「まず形にする」ための7つの必須項目を、前編・後編に分けて解説します。前編では、書き始められない理由を理解し、事業の「言語化」に必要な項目を学びます。
初めての事業計画書でつまずく理由
まず、なぜ多くの人が事業計画書を書き始められないのかを理解しましょう。
正解を求めすぎる
最も多い理由が、「正解を求めすぎる」ことです。
「この数字で合っているだろうか」「この表現で伝わるだろうか」「間違ったら恥ずかしい」——こうした不安が、筆を止めてしまいます。
しかし、事業計画書に「唯一の正解」はありません。事業は一つひとつ違いますし、経営者の考え方も異なります。あなたの事業を、あなたの言葉で説明すればよいのです。
書き始められない心理
多くの方が以下のような心理で悩んでいます。
- 正解がわからない:「こういう書き方で正しいのか不安」
- 間違ったら恥ずかしい:「金融機関に提出して笑われたらどうしよう」
- 数字に自信がない:「売上予測なんて、どう計算すればいいかわからない」
- 時間がかかりそう:「完璧なものを作るには、何日もかかりそう」
こうした心理は、誰もが通る道です。あなただけではありません。
対処法:まずは誰にも見せない前提で書く
対処法は、最初は「誰にも見せない前提」で書くことです。
メモ帳でも、Wordでも、紙でもかまいません。まず、自分の頭の中にある事業のイメージを、文字にしてみましょう。
数字は仮置きでかまいません。「だいたいこれくらい」というレベルで十分です。後から修正すればよいのです。
そして、1時間で8割を書こうとしないでください。少しずつ、書けるところから埋めていけばよいのです。
必須項目①:事業概要【最重要】
それでは、具体的な必須項目を見ていきましょう。最初は「事業概要」です。
事業を一文で説明する
事業概要とは、「あなたの事業を一文で説明するもの」です。
これが明確でないと、計画書全体が曖昧になります。逆に、ここがしっかりしていれば、他の項目は後から埋めやすくなります。
書き方のポイント 「誰に・何を・どこで・どのように提供するのか」を一文にまとめます。
良い例
- 「30代女性向けに、健康志向の弁当をオフィス街で販売する事業」
- 「地元の中小工場向けに、設備メンテナンスの訪問サービスを提供する事業」
- 「子育て中の母親向けに、オンラインで英語レッスンを提供する事業」
避けたい例
- 「革新的なサービスを提供する事業」(何をするのか不明)
- 「幅広い層に向けて多様な商品を提供する」(誰に何をが曖昧)
誰向けかを明確にする
特に重要なのが、「誰向けか」を明確にすることです。
「できるだけ多くの人に買ってほしい」という気持ちはわかります。しかし、ターゲットを絞らないと、誰にも刺さらないメッセージになってしまいます。
ターゲットを絞る例
- 「20~40代女性」→「30代の働く独身女性」
- 「中小企業」→「従業員10~30名の製造業」
- 「子育て世代」→「0~3歳の子を持つ母親」
ターゲットを絞ることで、その人たちが本当に必要としている商品・サービスが見えてきます。
必須項目②:商品・サービス内容
次に、具体的に何を提供するのかを説明します。
強み・差別化ポイント
商品・サービスの説明で最も重要なのは、「なぜあなたから買うのか」という差別化ポイントです。
書き方のポイント
- 競合と比較して、何が違うのか
- 顧客にとって、どんなメリットがあるのか
- なぜそれができるのか(経験、技術、仕組みなど)
記載イメージ 「当店の弁当は、管理栄養士が監修した栄養バランスに優れたメニューです。一般的な弁当店と違い、カロリーだけでなく塩分・糖質も管理しており、健康を気にする顧客に支持されています。私は管理栄養士として15年の経験があり、この専門性が強みです」
完璧な文章でなくてかまいません。まずは、「うちは○○が違う」という点を書き出してみましょう。
価格設定の考え方
価格についても、簡単に触れておきましょう。
書くべきポイント
- いくらで販売するのか
- その価格は、競合と比べて高いのか、安いのか、同じくらいなのか
- その価格設定の理由
記載イメージ 「価格は1食800円に設定します。一般的な弁当(500~600円)より高めですが、栄養管理された専門性を考えると妥当な価格です。類似の健康志向弁当店(1,000円前後)と比べると、手頃な価格帯です」
価格設定は、後から見直すこともできます。最初は「だいたいこれくらい」で十分です。
必須項目③:市場・顧客
次に、市場と顧客について説明します。
大きな市場より具体性
市場について書く際、よくある間違いが「市場規模○○兆円」といった大きな数字を並べることです。
金融機関が知りたいのは、「あなたの事業が参入する具体的な市場」です。
書き方のポイント
- 自社がカバーできる商圏(地域、オンラインなど)
- その商圏にどれくらいの潜在顧客がいるのか
- その顧客が抱えている課題
記載イメージ 「○○駅周辺のオフィスビル5棟には、約2,000名の従業員が勤務しています。その約半数が女性で、昼食は外食またはコンビニ弁当に頼っています。健康志向の弁当店はこのエリアにまだなく、ニーズがあると考えられます」
大きな統計データよりも、あなたの足で調べた具体的な情報の方が説得力があります。
想定顧客像の重要性
さらに具体的に、「どんな人が買ってくれるのか」を想像して書きましょう。
記載イメージ 「メインターゲットは、30代の働く独身女性です。仕事が忙しく外食が多いが、健康も気になっている。コンビニ弁当では物足りないが、高級レストランに行く時間もない。手頃な価格で栄養バランスの取れた食事を求めています」
このように、顧客の姿を具体的にイメージすることで、商品開発や販売戦略が明確になります。
前編のまとめ
前編では、事業計画書を書き始められない理由と、最初の3つの必須項目(事業概要、商品・サービス内容、市場・顧客)を解説しました。
- 完璧を求めず、まずは「誰にも見せない前提」で書き始める
- 事業を一文で説明できることが重要
- 強み・差別化ポイントを自分の言葉で書く
- 大きな市場より、具体的な商圏と顧客像を描く
後編では、多くの人が苦手とする「数字」の部分(売上計画、経費計画、資金計画)と、経営者の経歴の書き方について詳しく解説します。

